遺産分割に期限はある?早期解決を目指すべき理由

ご家族が亡くなった後は、身辺整理などでバタバタして、なかなか遺産分割に手がつかないというケースもあるでしょう。
遺産分割に法律上の期限はないものの、長期間放置するとさまざまなリスクを負ってしまいます。そのため、ある程度身辺が落ち着いた段階で、早期に遺産分割へと着手しましょう。

今回は、遺産分割に期限はあるのか、なぜ早期解決を目指すべきなのかという点について解説します。

遺産分割はいつでも可能|期限はない

遺産分割に関するルールは民法で定められていますが、遺産分割の期限は特に設けられていません。
民法907条1項では、共同相続人は「いつでも」協議により遺産分割ができると定められています。
したがって、極端に言えば相続開始から10年、20年と長期間が経ってから遺産分割を行っても、民法上は問題ないのです。

遺産分割をしないで長期間放置するリスクとは?

しかし、相続開始後も遺産分割をせずに長期間放置していると、以下のようなリスクを負うことになってしまいます。
トラブルを回避するためにも、できる限り早い段階で弁護士にご相談いただき、遺産分割に着手することをお勧めいたします。

二次相続が発生する可能性がある

遺産分割が終わらないうちに、相続人のうち誰かが亡くなって発生する次の相続を「二次相続」と言います。
二次相続が発生した場合、

  • 一次相続(先行する相続)の遺産分割協議に、二次相続人も参加する
  • 相続関係者の数が増える
  • 相続が多段階になることで、遺産の分け方も複雑になる

といった事情から、遺産分割における論点が大幅に増え、その分トラブルに発展する可能性が上がってしまいます。
二次相続の発生を避けるためには、相続発生後、早期に遺産分割を完了することが大切です。

相続放棄・限定承認ができなくなる

被相続人が死亡時に有していた資産を債務が上回っている場合、相続人はマイナスの財産を相続することになってしまいます。
このような事態を避けるためには、「相続放棄」(民法939条)か「限定承認」(民法922条)を行うことが効果的です。

相続放棄:資産・債務を一切相続しない旨の意思表示
限定承認:相続によって得た資産の限度でのみ、債務を相続する旨の意思表示

相続放棄と限定承認はいずれも、家庭裁判所において申述する方式で行う必要があります(民法938条、924条)。

この家庭裁判所における申述は、原則として、相続の開始を知った時から3か月以内に行う必要がある点に注意が必要です(民法915条1項)。
実務上は、「3か月」を過ぎても相続放棄や限定承認が認められるケースもありますが、家庭裁判所に対して合理的な理由説明を行うことが求められます。

何の理由もなく、単に「面倒だから」という理由で遺産分割を行わずに放置していた場合には、相続放棄や限定承認が認められない可能性が高いです。そうなると、相続人は想定外に高額の債務を背負うことになってしまいます。

相続放棄や限定承認をすべきなのに、それに気づかぬまま期限を徒過してしまったということがないように、早めに遺産分割の検討に着手しておくべきでしょう。

チェックポイント

遺産の分け方が決まっていなくても、被相続人が有していた資産と債務を調査して、どちらが多いかを早めに把握しておきましょう。

もし債務が資産を上回っているようなら、弁護士にご相談のうえで、相続放棄や限定承認をご検討ください。

税務申告の期限を過ぎてしまう

相続人は、以下の期限までに「所得税の準確定申告」と「相続税申告」という2種類の税務申告を行う必要があります。

所得税の準確定申告…相続の開始を知った日の翌日から4か月以内
相続税申告…相続の開始を知った日の翌日から10か月以内

これらの税務申告は、遺産分割が完了していなくても行うことができますが、少なくとも被相続人の生前の所得や資産を調査することは必要になります。
また、遺産分割未了の状態で相続税申告を行った場合、後から修正申告や更正の請求を行わなければならず、二度手間になってしまいます。

税務申告のことを考えると、早めに遺産分割協議を開始し、可能であれば相続税申告の期限までに遺産分割を完了しておくことが望ましいでしょう。

チェックポイント

所得税の準確定申告・相続税申告の手続きは、税理士に依頼するのがスムーズです。

遺産分割などを弁護士にご依頼いただければ、提携先の税理士にワンストップでご相談いただけます。

まとめ

遺産分割に法律上の期限はないものの、長期間放置すると、二次相続・相続放棄や限定承認・税務申告などとの関係でトラブルを生じかねません。
そのため、身辺整理などがある程度落ち着いた段階で、お早めに弁護士までご相談ください。

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