補助金

補助金で固定資産を購入したら圧縮記帳を検討しよう

事業再構築補助金の公募が開始されました。
第一回目の公募は4月で終わりですが、事業再構築補助金の事務局によると、年度内に4回ほどの公募を計画しているそうです。

事業再構築補助金の予算は1兆円を超える異例の規模で、今回初めて補助金の申請をされるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、補助金で固定資産を購入したときの、圧縮記帳という税務を解説します。

補助金は法人税の課税対象

事業再構築補助金に限ったことではなく、補助金は、法人が受け取れば法人税の益金(=収入)になります。
仮に法人の実効税率が30%であれば、200万円の補助金を受け取ったとしても、実際にそれを会社の事業に利用できるのは、実効税率分を控除した140万円に目減りするということです。

しかし、経費を申請して補助金を受け取る分には、この影響を受けません。
なぜなら、広告宣伝費に300万円を支払い、それに対して補助金が200万円支給されたところで、損金(=経費)になる額のほうが多いからです。

では、補助金にかかる税金がいつ問題になるのかというと、補助金で固定資産を購入するときです。取得価額10万円以上の固定資産を購入したときは、すぐに全額を経費にすることができません。減価償却を行って、少しずつ経費にしていきます。

たとえば、機械装置300万円(耐用年数8年、償却率0.250)を購入し、200万円の補助金を受け取ったとします。仮に機械装置を初年度で12ヶ月使用したとしても、初年度に損金に算入できるのは75万円です。
初年度の減価償却費が75万円の場合、補助金200万円との差額の125万円に、法人税がかかります。そのため、200万円を全額、固定資産の購入に充てられないことになります。

そこで、補助金で固定資産を購入したときには「圧縮記帳」という処理が認められます。圧縮記帳は、会社が任意で行うもので、必ずやらなければならない処理ではありません。

しかし、この処理を行うと、固定資産を購入した初年度の税負担を軽減し、受け取った補助金を100%設備投資に活用することができます。

【(参考)減価償却費】

  • 取得価額300万円
  • 耐用年数8年(200%定率法)
  • 償却率0.250、改定償却率0.334、保証率0.07909
1年目※ 750,000
2年目 562,500
3年目 421,875
4年目 316,406
5年目 237,304
6年目 237,779
7年目 237,779
8年目 236,356
2,999,999

※12ヶ月使用したものと仮定
もし年の途中から使い始めた場合、初年度はその月数分しか損金になりませんので、損金に算入できる金額はさらに減ります。

圧縮記帳の方法

決算時に、補助金の交付時に計上した収益を限度に「圧縮損」を計上し、補助金と相殺します。たとえば、機械装置(耐用年数8年)を300万円で取得して補助金200万円を受け取った場合、決算時に下記の処理をします。

機械装置圧縮損 200万円 / 機械装置 225万円
減価償却費   25万円※

※(300万円-200万円)×0.250=25万円
減価償却は、取得価額(300万円)から圧縮損(200万円)を控除した残りで計算します。
この処理によって、収益として計上されていた補助金200万円分の益金が相殺され、受け取った補助金の税負担がなくなります。

圧縮記帳の注意点

補助金の交付が事業年度をまたぐ場合

上記の処理は、同じ事業年度内に固定資産を購入し、補助金も受け取っている場合の処理です。

もし固定資産を購入して補助金の交付がないまま決算を迎えた場合、決算では、そのときの簿価で減価償却を行います。

翌事業年度に補助金が交付された場合、次の決算で圧縮損を計上することはできますが、減価償却をした分の調整が必要になります。
詳しくは、税理士等にお尋ねください。

期末時点で返還不要であることが確定していない場合

期末に返還不要であることが確定していない補助金は、圧縮損の処理ではなく、仮受金処理や特別勘定を設けるなど別の方法で、税負担が発生しない処理をします。

なお、返還不要が確定していない場合とは、たとえば補助金の交付規定に違反があったときの返還ルールのような一般条項のことではありませんので、この処理が必要となるケースは限られます。

おわりに

圧縮記帳は、減価償却の前倒しの処理に近いため、法人税等がかかるタイミングを先送りしているものになります。
よって複数年でみたとき、経費にできる額のトータルは、圧縮記帳を使っても使わなくても同じです。
補助金を受けた年の税負担を減らせるという点で、計画どおりの設備投資ができる点にメリットがあります。

なお圧縮記帳を使うときは、申告書に別表を添付する必要があります。圧縮記帳の処理や税務申告については、税理士にご相談ください。

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