交通事故による股関節の脱臼・骨折が完治せず|後遺障害等級・慰謝料

交通事故によって股関節部分に衝撃が加わった場合、股関節の脱臼・骨折などが生じる可能性があります。

股関節の脱臼・骨折は、リハビリの経過によって何らかの後遺障害が残るケースがあります。
その場合は、加害者側に対して後遺障害慰謝料を請求できますので、弁護士にご相談のうえで等級認定申請や示談交渉の準備を進めましょう。

今回は、股関節の脱臼・骨折が完治しなかった場合に、認定される可能性がある後遺障害等級と、後遺障害慰謝料の金額目安について解説します。

股関節に関する後遺障害の種類・後遺障害等級

交通事故によって生じる、股関節に関する後遺障害には、「可動域制限」「変形障害」「動揺関節」「神経障害」「正常分娩機能の障害」の5種類があります。

それぞれについて、症状別の後遺障害等級を見てみましょう。

可動域制限

可動域制限とは、主に骨盤の変形や筋力・柔軟性の低下が原因で、股関節が動かしにくくなった状態をいいます。

後遺障害等級 後遺障害の内容
第8級 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
第10級 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
第12級 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
可動域制限の後遺障害等級

チェックポイント
可動域制限の後遺障害等級の基準となる「用廃」「著しい障害」「障害」とは、それぞれ以下のいずれかを満たす状態を意味します。

①用廃
・股関節が全く動かない状態
・股関節の可動域が正常な状態の10%以下
・股関節が人工関節によって置換されており、可動域が正常な状態の50%以下

②著しい障害
・股関節の可動域が正常な状態の50%以下
・股関節が人工関節によって置換されている

③障害
・股関節の可動域が正常な状態の75%以下

変形障害

変形障害とは、骨盤など、股関節周辺の骨が変形した状態をいいます。

後遺障害等級 後遺障害の内容
第12級 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの

チェックポイント
「著しい変形」と認められるには、裸になった状態で、外見上明らかな程度に骨が変形していることが必要です。

動揺関節

動揺関節とは、骨の変形や関節の損傷などに伴い、異常な股関節の運動が発生している状態をいいます。

後遺障害等級 後遺障害の内容
第8級準用 硬性補装具を常に必要としている場合
第10級準用 硬性補装具を時々必要としている場合
第12級準用 硬性補装具を重激な労働などの場合のみ必要としている場合
動揺関節が習慣性脱臼に該当する場合

チェックポイント
後遺障害等級の「準用」とは、後遺障害等級表に載っていない障害(後遺症)であっても、等級表記載の症状に相当する程度のものについては、個別に後遺障害等級を認定するという運用を意味します。

準用による後遺障害等級の認定基準の詳細は、弁護士にご確認ください。

神経障害

神経障害とは、股関節周辺に痛みやしびれが残った状態をいいます。

後遺障害等級 後遺障害の内容
第12級 局部に頑固な神経症状を残すもの
第14級 局部に神経症状を残すもの

チェックポイント
神経障害の場合、レントゲン・MRI・CTなどの画像検査における所見が得られれば12級、画像所見が得られなければ14級という棲み分けがなされています。

また、14級の認定を申請する場合、画像所見は不要だとしても、交通事故による神経障害の発生が医学的に説明できる必要があります。
そのため、事故直後から継続的に通院して、医師による後遺障害の診断を得られるように努めましょう。

正常分娩機能の障害

正常分娩機能の障害とは、骨盤骨折が原因で女性の産道が狭まり、正常な分娩が困難になった状態をいいます。

後遺障害等級 後遺障害の内容
第11級 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの(女性の産道が狭まり、正常分娩が困難になったもの)

股関節の後遺障害に係る後遺障害慰謝料の目安

股関節に関連して発生した後遺障害につき、被害者が補償を受けるべき後遺障害慰謝料の金額目安は、以下のとおりです。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料
第8級 830万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第14級 110万円

なお、上記は「弁護士基準(または裁判所基準)」によって計算された金額です。

弁護士基準とは、被害者に生じた実損害額を裁判例に基づいて計算するための基準であり、被害者の正当な権利の金額を見積もることができます。

しかし、実際の示談交渉では、加害者側の任意保険会社から「任意保険基準」によって計算した示談金を提示されることが多いです。
その際、任意保険会社の提示額を直ちに受け入れるのではなく、裁判例に依拠した弁護士基準による支払いを主張することが大切になります。

弁護士にご相談いただければ、弁護士基準に近い金額の示談金を獲得し、被害者の正当な権利・利益を実現できる可能性が高まります。

まとめ

交通事故によって股関節の後遺障害が残った場合、きちんと入通院して後遺障害等級認定を受けることにより、加害者側に後遺障害慰謝料を請求できます。

認定される等級や、用いる算定基準によって慰謝料額が大きく変わりますので、適正な金額の後遺障害慰謝料を獲得したい場合は、お早めに弁護士までご相談ください。

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