交通事故時に補償される介護費用の金額は?

交通事故で体の枢要部に衝撃が加わった場合、寝たきりになったり、身体に麻痺が残ったりすることがあります。
この場合、将来にわたってずっと介護が必要となり、ご家族にとっては肉体的・経済的に多大なる負担が発生してしまいます。

交通事故によって要介護の状態に陥った場合、加害者側に対して介護費用の補償を請求することができます。
介護費用の金額はかなり高額になるケースも多いので、弁護士にご相談のうえで正当な請求を行いましょう。

 交通事故の加害者側に介護費用の補償を請求できる場合とは?

「交通事故が原因で要介護の状態になった」という因果関係が認められれば、被害者は加害者に対して、介護費用の補償を請求できます。

介護費用が請求可能な場合は、以下の2つに大別されます。

要介護第1級または第2級の後遺障害が認定された場合

後遺障害等級認定において、認定される等級の中に「要介護第1級」と「要介護第2級」が存在します。
これらは、通常の後遺障害第1級・第2級とは別枠であり、以下の後遺障害が対象とされています。

要介護第1級 ①神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
②胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
要介護第2級 ①神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
②胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

上記のとおり、要介護第1級が「常時介護」、要介護第2級が「随時介護」の状態であり、後遺障害等級認定の段階で介護の必要性が認定されます。

そのため、要介護第1級または第2級の認定を受ければ、介護の必要性があることを前提とできるため、介護費用の請求交渉を有利に進められます。

それ以外で、介護の必要性が認められる場合

後遺障害等級認定において、要介護第1級または第2級が認定されなくても、介護の必要性を客観的に示すことができれば、介護費用の補償を受けられる可能性があります。

特に、高次脳機能障害などによって、生活に多大なる影響が生じている場合には、介護の必要性が認められる可能性が高いでしょう。

チェックポイント

介護の必要性については、医師の診断結果に加えて、被害者の普段の生活状況や、自分でできることの内容などを総合的に考慮して判断されます。

特に法的手続きに移行した場合、客観的な資料から介護の必要性を証明できるかどうかが焦点となるため、弁護士にご相談のうえで資料準備を進めることをお勧めいたします。

加害者側に請求できる介護費用の算定方法

介護費用は、将来の長い期間にわたって発生するため、その総額は非常に高額になることも多いです。
具体的に、どのようにして介護費用が計算されるのかについて、例を用いて見てみましょう。

介護費用の日額|近親者か職業介護者かで異なる

介護費用の日額は、介護を行う人が近親者か職業介護者かによって、以下のとおり異なる取り扱いがなされています。

近親者の場合 日額8,000円
職業介護者 実費

チェックポイント

介護費用の日額は、介護の必要性の程度や、(職業介護者の場合は)一般的な費用相場などに照らして調整される場合があります。

介護費用は一括清算|ライプニッツ係数による中間利息控除を行う

介護費用は、基本的には示談金として一括で支払われます。つまり、将来発生する介護費用を前もって受け取ることになるため、「中間利息控除」を行わなければなりません。

※中間利息控除とは
将来受け取るべきお金の前払いを受ける際に、支払い時点から本来の債権発生時点までに発生する法定利息分を差し引くこと

中間利息控除を考慮するために、介護費用の総額は、ライプニッツ係数を用いた以下の式によって計算されます。

<介護費用の計算式>
介護費用 = 日額×365×介護年数に対応するライプニッツ係数
※介護年数=要介護になった時点からの平均余命

参考:就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省

介護費用の計算例

以下の設例について、実際に介護費用の金額を計算してみましょう。

<設例>
・近親者が介護を行う(日額8,000円)
・介護年数は30年

上記の設例では、介護年数は30年であり、30年に対応するライプニッツ係数(法定利率3%)は「19.600」です。
したがって、前述の計算式に従い、介護費用の総額は以下のとおりになります。

介護費用
=8000円×365×19.600
=57,232,000円

このように、介護費用はきわめて高額になるケースがあるため、正確に計算を行い、加害者側に対して正当に請求を行うことが大切です。

まとめ

交通事故によって要介護の状態となった場合、加害者側に対して、きわめて高額の介護費用を請求できる可能性があります。
さらに介護費用以外にも、後遺障害慰謝料や逸失利益を併せて請求できます。

交通事故によって被った損害を、加害者側に対して漏れなく請求したい場合は、ぜひお早めに弁護士までご相談ください。

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