遺産分割調停・審判とは?手続きの概要や必要な準備を解説

相続人間で遺産分割協議がまとまらなかった場合、遺産分割調停・審判に発展します。

遺産分割調停・審判は、遺産分割協議とは異なり、家庭裁判所で行われる法的手続きです。きちんと事前準備を整えて、公正・公平な遺産分割が実現するように努めましょう。

今回は、遺産分割調停・審判の手続きの概要や、必要な準備について解説します。

遺産分割調停・遺産分割審判の概要

遺産分割調停・審判はいずれも、遺産分割協議がうまくまとまらない場合に、遺産分割の方法を決定するため、家庭裁判所で行われる手続きです。

遺産分割調停|調停委員を仲介者として話し合う

遺産分割調停では、調停委員が仲介者的な立ち位置から、当事者である相続人の主張を公平に聴き取り、適切な妥協点を模索します。

可能な限り全相続人がwin-winの結果を得られるように、調停委員が歩み寄りの働きかけを行い、相続人間の合意を成立させることが、遺産分割調停の目的です。

最終的には裁判官が調停案を作成し、相続人に対して提示します。
全相続人が調停案に同意した場合、調停は成立となり、調停内容に従って遺産分割が行われます。

遺産分割審判|家庭裁判所が分割方法を強制的に決定する

遺産分割審判では、家庭裁判所が遺産分割の方法についての判断を行います。

協議や調停が成立しない場合の最後の手続きであるため、当事者である相続人の意思とは関係なく、強制的に分割方法が決定されるのが、遺産分割審判の特長です。

遺産分割審判では、まず家庭裁判所が調停の資料などを確認して、事実の調査を行います。
さらに、相続人から新たに提出を受けた証拠資料の検討や、相続人に対する審問などが実施されます。
そのうえで、法定相続分をベースとしつつ、実態に即した形で遺産分割の具体的な方法が提示されることになります。

チェックポイント

実務上は、先に遺産分割調停を申し立て、調停不成立となった場合に、自動的に遺産分割審判に移行して審理を行う流れが一般的です。

法的には、遺産分割調停を経ずに遺産分割審判を申し立てることもできますが、当事者同士での話し合いを尽くさせる観点から、職権で遺産分割調停に付す運用が行われることが多くなっています(家事事件手続法274条1項)。

遺産分割調停・審判に臨む際、必要な準備とは?

遺産分割調停・審判は、相続人の権利に直結する法的手続きなので、入念な事前準備が必要不可欠です。

相続人としては、少なくとも以下の準備を整えたうえで、遺産分割調停・審判に臨みましょう。

相続財産の全体像を把握する

遺産分割調停・審判では、すべての遺産の分け方を漏れなく決定することが大切です。

遺産に把握漏れがあると、後に改めて遺産分割を行う必要が生じてしまいます。
また、一部の相続人による財産隠しが行われている場合、公平・公正な遺産分割を実現することができません。

そのため、遺産分割調停・審判を申し立てる前に、どのような相続財産が存在するかを調査し、相続財産の全体像を把握しておきましょう。
なお、相続財産の調査については、弁護士にご依頼いただくことも可能です。

相続を希望する遺産の優先順位を決めておく

遺産分割調停では、遺産分割協議に引き続き、相続人間で遺産の分け方を交渉することになります。
交渉である以上はある程度の妥協が求められますが、妥協できるポイント・できないポイントをあらかじめ整理しておくことが重要になります。

たとえば、どうしても欲しい遺産が決まっていれば、その遺産を獲得するために他の部分で譲歩するなどの交渉戦略をとることも可能です。
相続を希望する財産の優先順位を付けることで、遺産分割調停に臨む際の方針を立てやすくなるでしょう。

特別受益・寄与分などについては証拠を準備する

遺産分割調停・審判に共通して、特別受益や寄与分など、相続分に影響を与える主張を行う場合には、対応する証拠を準備しておくことが重要です。

たとえば特別受益であれば、生前贈与の契約書や預貯金口座の入出金履歴など、特別受益に関する事実を示す証拠を準備しておきましょう。
寄与分であれば、ご自身が被相続人に対してどのような貢献を行ったのか、その貢献がどのくらいの金額に相当するのかを、証拠によって示す必要があります。

確固たる証拠を揃えることができれば、ご自身の主張が、他の相続人や家庭裁判所に認められやすくなるでしょう。

チェックポイント

遺産分割審判は非公開で行われますが、証拠による認定が行われ、遺産分割の方法が強制的・終局的に決定されるという点では、限りなく訴訟に近い手続きといえます。

遺産分割審判に臨む際には、これが最後だという意識を持って、証拠の収集・提出を中心とした事前準備を怠らないようにしましょう。

まとめ

遺産分割調停・審判は、最終的な遺産分割の結果に直結する重要な手続きです。

いずれの手続きについても、相続財産の全体像を正確に把握し、相続に関する権利関係について丁寧に法的検討を行うことで、ご自身が望む結果を得られる可能性が高まります。

弁護士にご相談いただければ、遺産分割調停・審判への対応について多角的にアドバイスをご提供するほか、実際の手続きについても代行し、依頼者のご負担を軽減いたします。
遺産分割に関するお悩みは、お早めに弁護士までご相談ください。

関連記事